2025年におけるビットコインとイーサリアムへの投資比較
1. 両者の概要と技術的特性(BTCは価値保存、ETHはスマートコントラクト)
ビットコイン(BTC)は2009年に誕生した世界初の暗号資産で、中央の管理者を持たないピアツーピアのデジタル通貨として設計されました 。その主目的は法定通貨に代わる交換手段および価値の保存手段(いわゆる「デジタルゴールド」)となることです。ネットワークの安全性と分散性を最重視して構築されており、取引記録はプルーフ・オブ・ワーク(PoW)方式のブロックチェーン上に蓄積されます。PoWにより高いセキュリティを実現していますが、エネルギー消費の大きさが指摘されています 。
イーサリアム(ETH)は2015年に開発されたブロックチェーンで、単なる通貨機能に留まらずブロックチェーン上でスマートコントラクト(契約の自動執行プログラム)や分散型アプリケーション(dApps)を稼働させることができる柔軟なプラットフォームとして設計されました 。この基盤上で開発者は様々な分散型アプリを構築でき、金融(DeFi)やNFTなど多様なユースケースが展開されています。イーサリアムのネイティブ通貨であるEther (ETH)はネットワーク手数料の支払い(ガス代)やステーキングなどに使われる実用トークンです。また2022年9月にはコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へと移行しました。PoSへの移行によりエネルギー消費を大幅削減しつつセキュリティと拡張性の向上が図られています 。
2. 市場規模と流動性(時価総額、取引高、ETF承認状況)
市場規模: ビットコインは時価総額で暗号資産全体の約半分を占める最大銘柄です。2025年4月現在、ビットコインの時価総額は約1.86兆ドル(約260兆円)に達しており、これはGoogleを抜いて世界第5位の資産に相当します。イーサリアムは時価総額で2番手につける暗号資産で、ビットコインのおよそ1/3程度の規模ながら数千億ドル台に達しています。両者とも巨大な時価総額を有し、世界の主要資産クラスに匹敵する存在感を示しています。
流動性: ビットコイン・イーサリアムはいずれも世界中の取引所で活発に売買されており、日次の取引高は数兆円規模に達します。また機関投資家向けに先物やオプション市場も整備されており、市場の厚みは十分です。
ETF承認状況: 2024年は暗号資産市場にとって画期的な年となりました。米国では長年承認が見送られてきた現物(スポット)型のビットコインETFが2024年1月についに初承認され、市場に投入されました。これらのETFは発売直後から記録的な資金流入を集めました 。ETFの登場により、投資家は暗号資産を直接保有せずとも証券口座を通じてビットコインに投資できるようになり、市場参加者の裾野が一段と拡大しています 。さらに2024年7月には米国で初の現物ETH ETFも承認・上場され、イーサリアムも伝統的な市場を通じた資金流入経路が整いました (なお米国ではそれ以前に先物型ETH ETFが承認済み)。これらの動きにより機関投資家のビットコイン・イーサリアム市場へのアクセスは飛躍的に向上し、流動性も一段と厚みを増しています。
3. 投資家層と機関投資家の動向
ビットコインはデジタル資産の中でも安全資産的な位置付けが強く、長期的な価値保存を目的とする機関投資家に支持されています。一部の企業が財務資産として保有したり、国家が法定通貨に採用する例も現れました。イーサリアムは新興の分散型金融(DeFi)やNFTエコシステムを支える基盤として成長しており、その将来性に注目する投資家やステーキングによる利回りを狙う層に保有されています。ある調査では機関投資家の暗号資産保有に占めるBTCとETHの比率は各約40%と拮抗していました 。実際、CME先物の取引高が過去最高となるなど両資産への機関マネー流入は顕著であり、暗号資産が合法的な資産クラスとして認知されつつあることを示しています。
4. 価格推移とボラティリティ
ビットコインは2010年代以降、複数回の急騰と暴落サイクルを経験し、その度に過去最高値を更新してきました。例えば2017年末に約2万ドルに達した後、2018年には80%以上下落し、その後2021年11月に約6.9万ドルの高値をつけ、2022年には約1.6万ドルまで再び75%以上下落しています。イーサリアムも同様で、2021年11月に約4,800ドルの最高値を記録後、翌年に約80%下落しました。その後2023年以降は市場が回復し、2024年末までにビットコインは過去最高値を更新(2025年4月に約9.4万ドル)し 、イーサリアムも$4,000台まで値を戻しています。
このように両資産とも長期では顕著な成長トレンドを描いていますが、短期的なボラティリティ(価格変動性)は依然大きい点に注意が必要です。過去の弱気相場ではBTCがピークから約75%下落しETHは約80%下落するといった急変動が実際に起きています。もっとも、かつて見られた90%以上の暴落に比べれば下落率は縮小傾向にあり、市場の成熟とともに変動幅が徐々に落ち着きつつあるとの指摘もあります(依然高い変動率ではあるものの)。このような大幅変動が起こり得るため、どちらが優位かを短期で予測することは困難であり、長期的視点で捉えることが重要となります。
5. 成長性とユースケースの広がり(DeFi/NFT/レイヤー2等)
両資産の将来成長性を考える上では、ユースケース(利用分野)の広がりが鍵となります。ビットコインは主に価値保存や資産移転に特化した設計ですが、近年は決済面での活用も模索されています。例えばセカンドレイヤーのライトニングネットワークを用いることで、ビットコインを高速・低コストで送金する取り組みも進んでいます。とはいえ、新たな機能拡張は限定的で、ビットコインの価値は今後もその希少性と信頼性(デジタルゴールドとしての地位)に基づく部分が大きいでしょう。
一方、イーサリアムは分散型アプリケーションのプラットフォームとして飛躍的な発展を遂げています。金融(DeFi)やNFTといった領域ではイーサリアムが事実上の標準基盤となっており、2024年末時点で全DeFi市場の半分超(TVL約663億ドル)がイーサリアム上にロックされています 。NFT市場やWeb3アプリの多くもイーサリアム上で展開しており、そのエコシステム規模は他のスマートコントラクト基盤を凌駕しています。
もちろんイーサリアムにも競合は存在し、SolanaやBSCなど高性能なスマートコントラクト・チェーンがシェア拡大を狙っています。しかし開発者コミュニティや蓄積された資産の規模でイーサリアムは依然トップであり、当面はDeFi/NFTの中心的な役割を維持すると見られます。
6. リスク分析(規制・技術的課題・競合など)
規制リスク: 各国政府の規制や法的扱いの変化により、市場が大きく影響を受ける可能性があります。現状、ビットコインとイーサリアムは分散性ゆえ証券ではなく商品(コモディティ)と見なす見解が有力ですが、それでも世界的に正式な通貨や金融資産として認められているわけではなく、依然として当局の厳しい監視下にあります。国によっては取引規制や課税強化が検討されています。
市場・流動性リスク: マクロ経済動向や市場心理の変化によって価格が急変動するリスクがあります。例えばインフレ抑制の金融引き締め局面では他のリスク資産同様に暗号資産市場から資金が流出し、大幅な下落を招きかねません。また、主要取引所の破綻や大規模ハッキング事件など暗号資産特有の要因でも流動性が低下し、瞬間的な急落が起こり得ます。こうした市場リスクはBTC・ETH双方に共通します。
技術・競合リスク: 技術上の不具合や競合の台頭によるリスクも存在します。イーサリアムでは2016年にスマートコントラクトの脆弱性を突いた大規模なハッキング事件(The DAO)が発生し、ハードフォークを余儀なくされた例があります。また、イーサリアムは他のレイヤー1チェーンとの競争に晒されており、ビットコインもステーブルコインやCBDC(中央銀行デジタル通貨)の普及による相対的な需要低下の可能性が指摘されています。
7. 投資戦略の考察
ビットコインとイーサリアムはそれぞれ魅力的な投資対象ですが、その性質の違いからリスク・リターン特性も異なります。したがって両者を組み合わせて保有することにより、ポートフォリオ全体のリスク分散と安定性向上を図る戦略が有効と考えられます。実際、多くの専門家はBTCとETHの併用を推奨しており、例えばBitwise社のCIOは「暗号資産に割り当てる場合、ビットコイン2:イーサリアム1の割合が美しいバランスである」と述べています。このような比率配分とすることで、ビットコインの相対的な安定性とイーサリアムの成長性を同時に取り込むことができます。総じて、両者に分散投資することで暗号資産市場の成長機会に幅広く参加しつつ、一方のリスクを他方で軽減できると期待されます。
8. BTC対ETHの投資割合
①保守的(安定志向)ポートフォリオ
BTC 80%:ETH 20%
ビットコインを主軸として価値の安定性を重視した配分です。BTCは機関投資家の参入が進み、法定通貨代替資産としての社会的認知が高いため、市場の急変動局面でも比較的リスク耐性が強くなります。ETHは将来的な成長性を取り込む目的で少量保有することで、市場全体の成長にも対応できます。
②バランス型ポートフォリオ
BTC 60%:ETH 40%
ビットコインとイーサリアム双方の特性をバランス良く取り入れた、機関投資家に最も推奨される標準的な配分です。ビットコインの安定した価値保存機能に加え、イーサリアムの高成長・高リターンのポテンシャルを比較的高い割合で組み入れ、リスク分散と中長期的な収益性をバランス良く追求します。
③積極的(成長志向)ポートフォリオ
BTC 40%:ETH 60%
イーサリアムを主軸として、より高いリターンを狙う積極的な投資家向けの割合です。イーサリアムはDeFiやNFT、Web3アプリケーションの中心プラットフォームであり、今後の成長余地が大きいと見込まれます。ただし、市場変動や競合技術台頭の影響を強く受ける可能性もあり、価格のボラティリティは相対的に大きくなります。
投資割合決定のポイント
BTCを多めにする理由
- 価値保存機能が高く、市場の下落局面でも相対的に耐性が強い
- 機関投資家の参入、現物ETFの承認により信頼性・流動性がさらに向上
- 規制リスクの影響を比較的受けにくいETHを多めにする理由
- 技術的進化が進み(PoS化など)、ネットワーク拡張性と環境性能が向上
- DeFi・NFT市場の中心としてエコシステムが拡大
- 高い成長余地が見込まれ、収益性が高くなる可能性がある最後に、個々の投資目的やリスク耐性を踏まえ、最終的な投資判断を下すことが重要です。
本資料は暗号資産への投資に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の売買の勧誘や推奨を目的とするものではありません。また、本資料に含まれる見解や予測、過去の実績に関する記載は将来の成果やパフォーマンスを保証するものではありません。暗号資産市場の状況は将来にわたり変動し得るため、本資料の内容は予告なく変更される可能性があります。 本資料に記載された情報は信頼できると判断した情報源に基づいて作成しておりますが、その正確性・完全性について当社が保証するものではありません。情報の解釈や適用にあたっては最新の状況をご確認いただく必要があります。本資料はあくまで参考資料であり、本資料の情報に基づいて行われたいかなる投資行動の結果についても、当社および本資料の作成者は一切の責任を負いかねます。すべての投資にはリスクが伴うことをご理解いただき、最終的な投資判断はご自身の判断と責任で行ってくださいますようお願いいたします。